2019年5月25日土曜日

一本道 再び

今,気がついた。
友部正人の詩がなぜ心に響くのか。
中也の詩のトーンに似ているんだ。

しんせい一箱分の一日を…
中央線よ彼女の胸に突き刺され…
ホッペタを寄せ合って…
底辺,ドブの中,怠惰の極み,そんなもんを経験した人間しか,絶対に浮かばんフレーズ。
優等生には絶対に書けないし,響かない詩。

心がぎゅっとなって,そして時々揺蕩う。
目を閉じれば,風景が浮かぶ。
あの街が,そこでのシーンが。
はっきりしちゃいすぎると,軋みすぎるけれども,ぼやけている程度なら,故郷のような匂いが柔らかく浮かび上がってくる。


友部正人「一本道」
https://www.youtube.com/watch?v=CITVlQF-cIE

ふと後をふり返ると
そこには夕焼けがありました
本当に何年ぶりのこと

そこには夕焼けがありました

あれからどの位たったのか
あれからどの位たったのか

ひとつ足を踏み出すごとに
影は後に伸びていきます
悲しい毒ははるかな海を染め
今日も一日が終ろうとしています
しんせい一箱分の一日を
指でひねってごみ箱の中

僕は今 阿佐ヶ谷の駅に立ち
電車を待っているところ
何もなかった事にしましょうと
今日も日が暮れました
あヽ中央線よ空を飛んで
あの娘の胸に突き刺され

どこへ行くのかこの一本道
西も東もわからない
行けども行けども見知らぬ街で
これが東京というものかしら
たずねてみても誰も答えちゃくれない
だから僕ももう聞かないよ

お銚子のすき間からのぞいてみると
そこには幸せがありました
幸せはホッペタを寄せあって
二人お酒をのんでました
その時月が話しかけます
もうすぐ夜が明けますよ

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