年をとってくると,世の中の「美しいもの」が見えなくなってくる。
そこに,すぐ眼の前のそこにあるのに,それが見えない,気づかない。
とても哀しいことだ。それはとっても寂しいことだ。
誠意を示し,それがゆえに望みが断たれる。
そして放たれる心からの若いほとばしり。
その美しさに気づいたのは,それからしばらく後。
ふと足もとに目をやると,そこに残された心の欠片。
なぜ私はそれに気づいたのだろう。
なぜ,無味乾燥な机の下に目など向けたのだろう。
少し身構え,何かに戦いを挑むかのように,常に上を向いて生きてきたはずではなかったか。
私の心に残っている何かが,そのかすかな訴えに耳を傾けたのか。
ほっとした。何かがじんわりと広がった。
私は動かなければなるまい。
若い誠意に応えなければ…,きっと。
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