現在,執筆している書評に関連するので,自分の過去の論文をざっと読みなおしているのだが,20年以上前に執筆した『管理会計とモティベーション』という論文に以下のように書いていた。
Deci and Flaste(1995)は,Robert Henri(1945,p.401)の次の言葉を引用する。「もしかしたら,途方もない考え方のように聞こえるかもしれないが,絵を描くことの目的は,絵を完成させることにあるのではない。絵が描くことの結果として生じるならば,絵はしたことのしるしとして役立ち,価値が有り,興味深くもあるであろう。しかし,それはあくまでも副産物にすぎない。真の芸術活動の背後にある目標は,存在の本質的状態(a state of being)に到達することである。それは高い次元で活動している状態,普通に存在している以上の状態に達することである。」
Deci and Flaste(1995)は,Henriは内発的動機づけの本質を理解していたに違いないとして,それを敷衍して,「内発的動づけとは活動それ自体に完全に没頭している心理的な状態であって,(金を稼ぐとか絵を完成させるというような)何かの目的に到達することとは無関係なのである」といい ,さらに「内発的動機付けの経験それ自体に価値があると信じている。・・・そのような経験のない人生は人生ではないとさえいえるかもしれない」という 。
内発的動機づけとは,人が自らの興味と自発性に基づいて挑戦的な場面に取り組む主体的な態度について,心理学的に説明する動機づけの概念であり(鹿毛,1991),これに基づく活動に従事している人間は,その行為に楽しさ,喜び,有意味さ,誇りなどを感知する。真の意味で活性化している組織とは,組織に属する人間が,自らの仕事を自己目的的に遂行することにより,そういった楽しさ,喜び,有意味さ,誇りといった内発的報酬を得ることのできる組織であるといってもよかろう。このような組織を実現することは,その社会的役割を考えた場合,企業の果たすべき最も重要な課題の一つであるといっても過言ではない。
いやー,若いね,文章が。
色々と意見があるのは知っているが,でも,改めてデシの『人を伸ばす力』は,個人的には良い本だと思う。
参考文献は以下。
Deci,E.L., and R.Flaste(1995), Why We Do What We Do, G.T.Putnam’s Sons.(桜井茂男訳『人を伸ばす力』新曜社,1999年.)
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