2025年7月31日木曜日

The River

ブルース・スプリーングスティーンのThe Riverという歌。

https://www.youtube.com/watch?v=zHnZP2FmLCc&list=RDzHnZP2FmLCc&start_radio=1

彼の歌も素晴らしいが,詩も素晴らしい。

なんと物悲しいのか。

空虚な想いと根底にある怒りがひしひしと伝わりつつも,いや伝わるからこそ燃えるような生命力も感じる。

近年の言葉でいうとラスト・ベルトでの出来事か。

当該の地域は,あの大統領の地盤だという。

しかし,ブルースは強くかの国の今の政治の在り方を批判しているという。

かの国の複雑な今に想いを致す。



俺は鄙びた谷あいで生まれ育った。

そこじゃ男たちはガキの頃から,父親がしていたような仕事をするよう育てられる。

そんな俺とメアリーが出会ったのは,高校の時。

彼女はやっと17歳になったばかり。

俺たちはその谷間を抜け出し緑の草原への降りて行ったんだ。

俺たちは川まで降りていくと,川の中へと飛び込んだんだ。

そう,川まで降りていき,流れに浮かんだのさ。

それから俺はメアリーを妊娠させてしまい,でも彼女が書いてよこしたのはそれだけで。

それで俺が19歳の誕生日に,組合証と結婚式の上着を手に入れ,二人で裁判所まで行って,判事にその問題をすべて片付けてもらったんだ。

結婚式の笑顔も,教会の通路を歩くこともなく。

花束も無ければ,ウェディングドレスさえも無かった。

その晩,俺たちは川まで行くと,二人して川に飛び込んだんだ。

そう川まで降りていき,流れに浮かんだのさ。


俺は建設業の仕事を得た。

ジョンズタウンにある会社で。

でも最近はあまり仕事がないんだ。

それというのも景気のせいさ。

今じゃ,とても重要と思われたすべてのものが,そう,みんな雲散して消えてしまった。

今の俺はまるで忘れてしまったような振りをして,メアリーの方は無関心を装っている。

でも,俺たちが兄の車で出かけたことは覚えている。

貯水池で彼女の体は日焼けして水にぬれ,その夜は堤に横になったまま眠らずにいて,彼女をそばに抱き寄せた。

彼女の息遣いが,互いに感じられるようにと。

今は,そんな思い出がよみがえるたびに俺を悩ませる。

まるで呪いのように俺を苦しめるんだ。

叶わなかった夢はまやかしだったのか。

それもと何かもっと悪いものなのか。

そうした思いが俺を川へと向かわせる。

その川はもう干上がっていると分かっていても。

その思いが今夜俺を川へと向かわせるんだ。

川へと降りていく,彼女と俺。

そうさ,川まで降りていき,俺たちは流れに乗るのさ。

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