ブルース・スプリーングスティーンのThe Riverという歌。
https://www.youtube.com/watch?v=zHnZP2FmLCc&list=RDzHnZP2FmLCc&start_radio=1
彼の歌も素晴らしいが,詩も素晴らしい。
なんと物悲しいのか。
空虚な想いと根底にある怒りがひしひしと伝わりつつも,いや伝わるからこそ燃えるような生命力も感じる。
近年の言葉でいうとラスト・ベルトでの出来事か。
当該の地域は,あの大統領の地盤だという。
しかし,ブルースは強くかの国の今の政治の在り方を批判しているという。
かの国の複雑な今に想いを致す。
俺は鄙びた谷あいで生まれ育った。
そこじゃ男たちはガキの頃から,父親がしていたような仕事をするよう育てられる。
そんな俺とメアリーが出会ったのは,高校の時。
彼女はやっと17歳になったばかり。
俺たちはその谷間を抜け出し緑の草原への降りて行ったんだ。
俺たちは川まで降りていくと,川の中へと飛び込んだんだ。
そう,川まで降りていき,流れに浮かんだのさ。
それから俺はメアリーを妊娠させてしまい,でも彼女が書いてよこしたのはそれだけで。
それで俺が19歳の誕生日に,組合証と結婚式の上着を手に入れ,二人で裁判所まで行って,判事にその問題をすべて片付けてもらったんだ。
結婚式の笑顔も,教会の通路を歩くこともなく。
花束も無ければ,ウェディングドレスさえも無かった。
その晩,俺たちは川まで行くと,二人して川に飛び込んだんだ。
そう川まで降りていき,流れに浮かんだのさ。
俺は建設業の仕事を得た。
ジョンズタウンにある会社で。
でも最近はあまり仕事がないんだ。
それというのも景気のせいさ。
今じゃ,とても重要と思われたすべてのものが,そう,みんな雲散して消えてしまった。
今の俺はまるで忘れてしまったような振りをして,メアリーの方は無関心を装っている。
でも,俺たちが兄の車で出かけたことは覚えている。
貯水池で彼女の体は日焼けして水にぬれ,その夜は堤に横になったまま眠らずにいて,彼女をそばに抱き寄せた。
彼女の息遣いが,互いに感じられるようにと。
今は,そんな思い出がよみがえるたびに俺を悩ませる。
まるで呪いのように俺を苦しめるんだ。
叶わなかった夢はまやかしだったのか。
それもと何かもっと悪いものなのか。
そうした思いが俺を川へと向かわせる。
その川はもう干上がっていると分かっていても。
その思いが今夜俺を川へと向かわせるんだ。
川へと降りていく,彼女と俺。
そうさ,川まで降りていき,俺たちは流れに乗るのさ。