2019年6月27日木曜日

Jリーグビジネス論11回目!

本日のご講演は元横浜マリノス社長(Jリーグの理事も兼任)の嘉悦朗氏。
昨年に引き続きのご登壇。
非常に明晰かつ論理的,かつ情熱的にお話をしていただける稀有の方。

プロサッカークラブの経営のイメージは?
華やかな世界?
地域社会への地道な貢献が大きな使命!
サッカーの普及・質の向上→フットボール・アカデミー
マリノスは強大なアカデミーを有している。
アカデミー出身の選手がかつては半分いた!
サッカー食育キャラバンとして,横浜,横須賀の小学校を300校訪問し,食育教育も!
おじさんらを対象としたサッカー教室,Futuroを通じて社会教育,横浜のスポーツセンターを巡回したサッカー教育,電動車いすの方へのサッカー教室。
ユニセフ,赤い羽根共同募金,赤十字の献血,清掃活動などなどにも従事。
災害時の復興支援のための募金活動も。
東日本大震災の時は4週連続,横浜や横須賀市の15か所を訪問し,2万人から2000万円を募金獲得。

クラブ経営の現実は…ハッピーではないことの方がはるかに多い!
在任期間中の勝敗は97勝62分61敗。
平均順位は6位。
悪くないが,結局,勝てなかった時の方が圧倒的に多い。
とんでもない事件が起きることもある。
黒人系の選手に対するバナナを使った差別行為が発生してしまった。
SNSが瞬く間に炎上。
社長は謝罪。
数万人の安全を守るという極めて重い責任を負っている。
2015年5月30日に日産スタジアムで大きな地震が発生。
試合継続の可否についてシビアな決断をしなければならない。
クラブ経営は,好きとか憧れだけで何とかなる世界ではない。

Jリーグのクラブとして存続していくために必要なことは?
キーワードは「持続可能な成長」。
ヒト,モノ,カネ,情報などの経営資源を適正に管理し,チームの高いパフォーマンスや地域活動を無理なく長期的に維持・向上できる経営基盤を確立することが必要。
収益の視点→赤字,債務超過の会費は至上命令(降格に!),親会社との関係(日産に依存),クラブライセンス(はく奪も!)
チーム強化の視点→強く魅力的なチームを作りたい,優勝争いしたい,ファンを増やしたい
両視点は相いれないところがある。
プロ野球はビリになっても降格しないけど,Jリーグは降格の恐怖と常に戦い続けなければならないから,プロ野球はまだ良い。
両者のバランスをとりながら大きく育てるのが経営者の最も重要な役割。

マリノスの経営改革の全体像
Step1:親会社への過度な依存からの脱却(自主売上の飛躍的な増大),以前は赤字を出したら,日産が補填してくれていた。
これにより,平均入場者数が増大!Jリーグ平均が下がっている中,1年目で16.7%増大!
翌年は東日本震災のために減少したが,その後増やし続け,5年目には25%増!
スポンサー収入,グッズ販売,スクール事業,すべてが増大!

Step2:City Footboll Group(CFG,マンチェスターシティの親会社)との資本提携による事業構造のグローバル化
CFGはヨーロッパにマンチェスターシティFC,アメリカにニューヨークシティFC,オーストラリアにメルボルンシティFと資本提携し,アジアでの提携先を探していた。
CFGによりトップチームや育成年代の革新的強化(人材スカウト,戦術/コーチングなど)につながる。
その他,持続可能な成長の基盤づくりやJリーグ,日本サッカーの発展への貢献も意図。

Step3:収益(コスト)構造の抜本的な改革
マリノスタウンにかかっていた施設関連費は,トップチーム人件費に次ぐ巨大な額であった。
施設関連費の割合が他クラブとの比較で3倍近かった。
マリノスタウンを日産スタジアムの横にあるサブスタジアムのところに移転(固定費から変動費へ)。

チームの強化について。
近年,話題を呼んだ「超大型補強」。
セレッソ:フォルラン6億円。
しかし成績はJ2へ降格し,翌年復帰もできなかった。
サガン鳥栖:トーレス8億円。
J1で14位でギリギリ残留。今年は最下位。
神戸:ボドルスキ6億円,イニエスタ32億円,ビジャ3億円。
2017年9位,2018年10位,2019年13位に低迷。
強化費とリーグ戦順位の相関は…
2011年度は,強化費と順位はおおよそ正相関していた。
2012年度はあまり正の相関関係が落ち始める。
この辺りから強化費の効果が怪しくなる。
2013年度は,さらに正の相関関係が落ちている。
資金を投入して年保の高い選手を集めているチームより,戦術やスタイルを工夫したチームが強くなるようになってきた。
超一流選手の獲得は,話題づくりや売り上げ増に確実に貢献するが,チームパフォーマンス向上に直結するとは限らなくなっている。
チームを創るとは…
ジグソーパズルのようなもの。
理想の家を創るようなもの(①家づくりのコンセプト,②広さ,構造,間取りのイメージ,③詳細設計,④設備,什器,家具,電気製品…)。
①~③を省いて,100インチの8Kテレビを買う人はいない!
チームを作る順序…
①クラブ/チームのビジョン・哲学
世界で通用する強さと魅力を兼ね備えたクラブを目指す?
Jリーグで他を圧倒する強さでファンを魅了するクラブを目指す?
最後まで戦い,地域の人々に勇気と感動を届けるクラブを目指す?
②ビジョン・哲学を具現化する戦術
最少失点・最多得点で他を圧倒する常勝軍団のサッカー?
失点のリスクを恐れず,パスをつないでゴールを目指す攻撃的サッカー?
失点を最小限に抑え,少ない得点でも勝ち点を積み上げる堅実なサッカー?
③戦術に適したシステム(ゲームモデル)
超攻撃的なシステム:4-3-3?
ハイリスク・システム:3-5-2?
システムが変わると同じ11人でも求める選手のタイプが変わってくる。
④ポジション別に求める選手の特性
フィジカル・テクニック・メンタル
以上の要素が,ポジションによって少しずつ違う。
⑤特性に合う選手の過不足状況の特定
年齢とポジション別に,レギュラー,準レギュラー,成長途上,育成年代を位置づける。
⑥不足が予想される選手の育成/獲得

















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