大学関係者や,私の活動を知る友人たちに,良く「なぜ,それほどまでに教育活動に時間を注ぐのか」という趣旨の質問をされる。
確かに事ほど左様に,私は膨大な時間をゼミに注いできた。
時に,研究者としての湧き上がる探究欲求を抑えつけ,そしてそれに悩みながら,時にはゼミ生にその想いをぶつけながら,それでも何とかこれまでやってきた。
その答えは,おそらく今晩にあるし,今日いただいた手紙の中にもある。
先ほど11期のT君の親御さんからお手紙が届いた。
T君は,第一志望の大学に落ちた経験から,「結果の出ない努力は時間の無駄である」との想いを抱き,中大に入学したそうだ。
ゼミ活動では,渡辺ゼミ史上初めてインター大会という全国大会で優勝するという快挙を成し遂げたが,T君はグループリーダーとして,また,その高い論理的思考能力に基づき,他のメンバーを牽引し,快挙の原動力であったと言っても反論するものは誰もいないであろう。
確かにT君は,大学入学時には得られなかった「結果」を,今度は得た。
しかし,同時に,「結果の出ない努力にかけた時間も決して無駄なものばかりではない」ということを知ったと思う。
人生において最も大切なことは,存在の本質的状態に到達することだ。
換言すれば,普通に存在している以上の状態,高い次元で活動している状態に到達するってこと。
T君は,ゼミ活動において,時間があっという間に経過する,あるいは我を忘れて研究に没入する,といった経験を何度もしたはずだ。
それこそが,普通に存在している以上の状態であり,豊かな人生を送るうえでは,絶対に欠かせない経験だ。
T君は良く言えば独創性が高く,ちょっと悪く言えば野放図なところがある。
しかし,それを良く理解する周囲を得た時に,何かきっと社会で大きなことを成し遂げるだろう。
T君の親御さんと同様に,私もこれから彼の人生に大きな期待をしている。
そんな学生の成長の過程に携わることができたことを,誇りに思う。
そこに…上記の質問の答えがきっとある。
0 件のコメント:
コメントを投稿