具体的な中身はまだ言えない・・・。
しかし,そのために,古い荷物を最近ひっくり返して,ある物を探している。
肝心なものは見つからないのだが,実に懐かしいものに出会えたりもするので,なんだか嬉しくもある。
四半世紀ほど前,私は調布に住んでいた。
私の家の近くには映画の撮影所があったのだが,友人の友人ということで,映画の美術監督を目指している同い年の美術助手の若者と親しくなった。
友人の友人だったが,撮影所帰りに金がない時にはふらっと我が家に立ち寄り,二人で良く酒を飲むようになった。
撮影所の近くにある,レゲエ音楽をひたすらかけ続ける小汚いバーで飲むこともあったが,お互い貧乏だったので,私の自宅で飲むことが多かったと思う。
そんな時,飲みながら,奴は良く絵を描いていた。
今,撮っている映画のセットのデッサンだとか。
あるいは自画像や共通の友人の顔を。
そのノートをどこかに紛失したと残念に思っていたのだが,出てきたのだ!
懐かしさとともに,あぁ奴はやっぱり才能があったんだなって思いつつ,素人目にも素晴らしく上手なその絵を眺めている。
そいつが初志を貫徹し美術監督になり,数年前日本アカデミー賞の美術監督部門にノミネートされたことを知った。
それからそのノートを探していたのだが,見つかって本当に良かった・・・。
ずぼらな奴のことだから,昔のノートなんてもう一冊も持っていないだろうな。
いつかもう一度出会えたら,渡してやろう。
ついでに,私の昔のノートも出てきた。
私は奴と飲みながら,好きな詩を書いたり,短歌を書いたりしたんだが・・・
中也のこの詩が最初に書かれていた。
今見てもやはり凄い。
この詩は・・・
「寒い夜の自画像」
きらびやかでもないけれど
この一本の手綱をはなさず
この陰暗の地域を過ぎる!
その志明らかなれば
冬の夜を我は嘆かず
人々の
憧れに引廻される女等の鼻唄を
わが瑣細なる罰と感じ
そが、わが皮膚を刺すにまかす。
われはわが怠惰を
寒月の下を往きながら。
陽気で、坦々として、
わが魂の願ふことであつた!
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