2023年4月6日木曜日

私のヒーローが…

畑正憲氏が亡くなられた。

思い返してみると、勉強が好きではなかった私だが、本だけは大好きになったのは、そしてそれがあったからこそ今の職に就くことができたと考えると、その遠因は、畑正憲氏の書物に接したことだと言えるかも。

小学校1年生の時、私の自宅では、新聞社が発行している生き物の写真雑誌が毎月届けられていた。

動物がなぜか好きだった私は、その写真雑誌にとても惹かれた。

毎月、届くのを楽しみにしていた。

昆虫シリーズにはあまり惹かれずに、哺乳類のシリーズは本当に楽しみだった。

最初は写真を見るだけだったが、徐々に文字の部分も読むようになった。

ふと目を引いたのが、無人島で熊と一緒に生活している人間のコラムの連載だった。

それが畑正憲氏だった。

確か「どんべい」という名前のヒグマだったと思う。

なんという馬鹿な人間もいるものだと衝撃を受けるとともに、私の脳裏に強烈に畑正憲氏、つまりムツゴロウが焼き付けられた。

中学にあがるころになると、文春文庫の畑氏の本を読みまくった。

ほぼ全巻読破したと思う。

動物ものが多いのだが、そしてそれが強烈に面白かったのだが、同時に畑氏は麻雀が好きで賭け事のことや、また自分で助兵衛を自認しておりそういった筋の話なども含め、私の興味を強く刺激したものだった。

畑氏は東大出身なのだが、高校時代に数学が苦手だったので、確か高木貞二氏の『解析概論』を読み、それ以降得意科目となっただとか、確かエドガー・A・ポーをの黒猫だったと思うが、それを原書で読み英語の能力を高めただとか、なぜかよく覚えている。

真似しようと思って、すぐに挫折したが。

それから高校にあがると、北海道の動物王国の番組を見るたびに、畑氏への想いが募り、付属高校の時に北大の獣医学部を目指すべく予備校に通ったこともあったっけ。

英語の文法の先生に、それは素晴らしいって褒められて、乗せられてその気になったのだが、こちらも結局は挫折してしまったが…

大学時代も、何度も何度も動物王国で住み込みで働こうって想ったのに、結局、できない理由ばかり考えて実行しなかった。

情けない…

もし大学時代に好きな女の子がいなければ、そしてもう少し背を押してくれる人がいれば、北海道に行っていて、そしてきっと今とは全く別の人生を歩んでいたかもしれない。

私にとっては畑氏はヒーローだった。

今にして思い返せば、私の人生を変えた人だった。

あんなに破天荒で、がしかし博識で、溢れ出すくらい魅力がある人物は、今の時代にはもはや見当たらない。

もう二度とあんな人、現れないかもしれない。

訃報に接して、30分ほど仕事が手につかず、遠い昔を想い返し、瞼が熱くなった。

ご冥福をお祈りしたい。

合掌

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