商学部の教職員を代表して,皆さんにお祝いの言葉を申し上げますとともに,皆さんが中央大学商学部の学生となられたことを心より歓迎いたします。
さて,あなたは普段の生活のなかで,どれだけ「普通に存在している以上の状態」に到達したことがあるでしょうか?
「それってどんな状態?」という声が聞こえてきそうですね。
簡単にいえば,それは時間が経つのも忘れるくらい何かに熱中・没入している状態のことです。
趣味の好きな何かや学校の部活をしている時,あるいは勉強(!?)をしている時に,そんな状態を経験したことがある人もいるのではないでしょうか。
経験者に尋ねます。
あとから考えてみて,そんな状態に到達したときの気分はいかがでしたか?
多くの心理学者が,その状態を「存在の本質的状態(a state of being)」と呼び,人が精神を健康に維持するうえでとても大事なことであると指摘していますが,中にはそういった状態を経験できない人生は人生ではない,とすら言う人もいます。
もちろん,何かを経験することによって得られる「結果」も大事でしょう。
例えば,部活の試合で「普通に存在している以上の状態」に到達し,そして結果として試合に勝ったこと,また,絵を描いている時にそんな状態になったとして,完成した絵の出来栄えがとても良くて周囲から褒められたことなど,それらの「結果」も確かに努力したことの「しるし」として意味はあるでしょう。
でも,それよりもずっと大事なのはやはり,何かに熱中して時を忘れるような,そんな状態に達することそれ自体なのです。
では,そうなるために求められることは何でしょう。
最も大事なことは,とにかく熱中できる対象を見つけることです。
大学生活は,誤解を恐れずに言えば,自分が生涯をかけて熱中して取り組むことのできる何かを見つけるための「旅」です。
一か所に長く滞在する旅もあれば,限られた期間の中で多くの場所を訪れる旅もあります。
あなたは,あなたなりの旅をして,自分の生涯の「宝物」を見つけてください。
熱中できる対象を見つけたら,それに熟達するプロセスで必要な知識やスキルを身につけなければなりません。
優秀な外科医は手術中,必要な手順やスキルをほとんど意識せずに行使し,局面に没入しつつオペを遂行するそうですが,それを可能にするのは,実は豊富な知識や経験を伴ったスキルなのです。
あなた方も,あることについて段々上手になっていくにつれ(つまりスキルが伴うようになってきて),どんどん楽しくなり,集中できるようになった,という経験があるのではないでしょうか。
熱中するのにも必要な条件があるのです。
あなた方がその条件をクリアすることができるよう,中央大学の教職員は精一杯応援します。
大事な宝物を見つけ,それに熟達するための楽しい旅に,一緒に出発しましょう!
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