私は2000年初頭から一貫してポジティブ心理学と管理会計の接合を目指してきた。
前者の中核的な概念として,最初は内発的動機づけ,現在は主として自己効力感・集約的効力感に着目している。
ところで,最初に内発的動機づけの概念に触れたときの衝撃は,今でも覚えているくらい衝撃的なものであった。
外的な報酬が全くなく,その行為そのものをすること自体が目的の行動をしている状態。
これである。
この本質を語るうえで,内発的動機づけ研究の大家であるエドワード・L・デシは,邦訳書『人を伸ばす力』の中で,ある美術教師の次のような言葉を紹介している。
もしかしたら途方もない考え方のように聞こえるかもしれないが,絵を書くことの目的は,絵を完成させることにあるのではない。絵が書くことの結果として生じるならば,絵はしたことのしるしとして役立ち,価値があり,興味深くもあるであろう。しかし,それはあくまでも副産物に過ぎない。真の芸術活動の背後にある目標は,存在の本質的な状態に到達することである。それは高い次元で活動している状態,普通に存在している以上の状態に達することである。」
私は職業として研究を行っているが,常にこの「普通に存在している状態」,つまり夢中になって取組み,時間の概念がなくなる状態に達したいと思っている。
内発的動機づけの効果は様々あるが,その状態に達すること自体が人生においては重要だと信じて疑わない。
