2018年4月23日月曜日

手から,手へ

池井昌樹さんの詩。
今日のNHKのプロフェッショナルで紹介されていた。
重くなる詩。
深く生と死に想いをいたす詩。
親を想いだす詩。
いつか子どもに読ませたくなる詩。
前を強くしっかりと見つめたくなる詩。
清廉な気持ちなる詩。
色々な形容ができる詩だなぁ。


やさしいちちと
やさしいははとのあいだにうまれた
おまえたちは
やさしい子だから
おまえたちは
不幸な生をあゆむのだろう

やさしいちちと
やさしいははから
やさしさだけをてわたされ
とまとまいながら
石ころだらけな
けわしい道をあゆむのだろう

どんなにやさしいちちははも
おまえたちとは一緒に行けない
どこかへ
やがてはかえるのだから

やがてはかえってしまうのだから
たすけてやれない
なにひとつ
たすけてやれない

そこからは
たったひとり

まだあどけないえがおにむかって
やさしいちちと
やさしいははとは
うちあけようもないのだけれど

いまはにおやかなその頬が痩け
その澄んだ瞳の凍りつく日がおとずれても
怯んではならぬ
憎んではならぬ
悔いてはならぬ

やさしい子らよ
おぼえておおき
やさしいさは
このちちよりも
このははよりもとおくから
受け継がれてきた
ちまみれなばとんなのだから
てわたすときがくるまでは
けっしててばなしてはならぬ

まだあどけないえがおにむかって
うちあけようもないのだけど
やさしいちちと
やさしいははとがちをわけた
やさしい子らよ
おぼえておおき

やさしさを捨てたくなったり
どこかへ置いて行きたくなったり
またそうしなければあゆめないほど
そのやさしさがおもたくなったら
そのやさしさがくるしくなったら

そんなときには
ひかりのほうをむいていよ
いないいないばあ

おまえたちを
こころゆくまでえがおでいさせた
ひかりのほうをむいていよ

このちちよりも
このははよりもとおくから
射し込んでくる
一条の
ひかりから眼をそむけずにいよ

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